理論社

第15回

2020.12.01更新

自分の道を見つけたい! 第15回 G1さん篇3

G1さん G1さん
中学校を不登校になったことで、心のダメージはあったんでしょうけれど、なんたって競馬中継を見て、馬に乗ってる人がすごく格好良く見えた、っていう前提があるので、本物の馬がいるハーモニィカレッジに行くことは、「自分もソレになれるかも」というワクワクのほうが強かったですね。 つくづく「ピュアな憧れ」っていうのが、いちばん人を動かすなって思います。

ハーモニィでは、「たのし荘」という寄宿生用のアパートみたいなのがあって、そこにひと部屋3人くらいで寝起きしていました。 寄宿生は、全体で多くても5、6人でした。

人の気持ちが過剰に気になってしまうHSPの気質があるように思うというG1さん。他の子と同室で、一日中いっしょにすごす生活は、苦痛じゃなかったんでしょうか?

G1さん G1さん
それこそHSPの特徴かもしれないですが、大勢の人がいると嫌なんですよね。
寄宿塾は人数も少ないうえに、お互いに不登校で境遇も似てるからか、みんな優しくて打ちとけやすかったですね。
それにずっと一緒にいるから、友だちっていうか、ほとんど兄弟みたいな感じなんですよ。だから、普通に、めっちゃケンカとかしてましたよ(笑)

寄宿生は一定のお金も払って入所してるわけだし、ぼくだったら「ケガさせたらあかんな」とか思っちゃいそうですが、シュートは、学生時代からいろんなヤンチャなこともやってきたりという経験もある人だし、本当に大事なことだけを伝えて、少々ヤンチャやケンカをしても、黙って子どもたちの自主性に任せるという感じでした。家族みたいに垣根なく接してくれました。そういう態度は、ヒロさんもシュートも一貫してましたね。

もしも、「預かってる子だから」「お金もらってるから」「不登校児だから」というので、腫れ物にさわるような扱いをされてたら、嫌だっただろうなと思います。
子どもってそういうの、敏感に感じとるじゃないですか。

家族や兄弟みたいな感じだから、「おれは今日は行かん、いやや!」「なんでやねん!」とか、寄宿生同士も普通にしょっちゅうケンカするんですけど、子どもたちの間に陰湿さがなかったんですよね。

そうやって言いたいこと言い合う状態って、ある意味、ちゃんとコミュニケーションが取れてるわけじゃないですか。思ったことを言えてる、感情をぶつけることができて、自己表現ができているわけで。そうすると、別になんの問題もないんですよ。遺恨が残らないから、嫌な気持ちを引きずることもないんです。

日本の学校のしんどいところって、思ったことを言わないで、上辺だけの付き合いになるところじゃないですか?

なるほど〜。競走馬育成騎乗者として働く現在のG1さんが、フィリピンの方とのやり取りを楽だと感じる理由(第13回参照)とつながるなあと思いました。
自分の中学時代のことを思い返すと、確かに、誰がなにを考えているのか、腹の探り合いをしつづけないといけない空気や、自分がいじめられる立場にならないために、相手を怒らせないように気をつかったり萎縮したりと、「思ったことを遠慮なく言い、感情をストレートにぶつける」なんて状態とはほど遠かったように思います。

そして、こういう「思いや感情をストレートに発信、発散させてはいけない」という空気は、中学校ばかりではなく、大人の世界にも蔓延しているのだと思います。というよりも、大人の世界に蔓延している空気が、子どもの世界を染めあげてしまっているのではないでしょうか。

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「フィリピンの方たちとの関係の話とすごく繋がりますね」とG1さんに言うと、「だから不登校になるような子たちは、極論ですが一度思い切って外国に行ってみるなんてのもいいかもしれないですよね。日本人的なきめこまやかさって、いいところもあるけど、悪いところが増幅される事もあるような気がするので」とおっしゃいました。

思春期の頃に「海外に行きたければ行けるプログラム」が公的に確立されたらいいのになあ、なんて思いました。
とにかく、「ひとつの道しかない」と思いこんでしまうのが、いちばん息苦しい気がします。「どんな道でも試そうと思えば試せる」という選択肢がたくさん出来てほしいです。
フィリピン以外にも、西欧、アフリカ、中東など、どこかに自分の個性にしっくりくる場所があるかもしれません。

ちなみに、「シュートはヤンチャなこともやってきた」とありますが、第1回〜6回に登場の大堀さんは、G1さんが寄宿していた当時は金髪だったそうです(笑)
ギターが弾けて、スポーツができて、馬にも乗れる、一緒に遊んでくれる年上の兄貴、という感じだったのでしょう。
G1さんは、「ヤンチャなこともするけど、本当に悪いことはやっちゃダメってちゃんと分かってる、言える年上の人と出会えるってことも大きいと思うんですよね」と言います。

確かに、思春期の頃って「すこし年上のお兄さんやお姉さん」と知り合いというだけで嬉しかったり、心にゆとりが出たりするんですよねえ。
どんなにいいことを言われても、おじさんやおばさんじゃ響かないのに、憧れを感じるちょっと上の人に言われると、ズバッと心を掴まれたりします。
中学生くらいの子が、大学生くらいの人たちと触れあえる場がもっと増えたらいいな、とも思います。日本の中学生って、ものすごく狭い世界に閉じ込められてる気がするので。

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