「行かなくてよくない?」と思った中学校
入学して数日で行かなくなる
とにかくジョッキーがカッコよく見えましたね。
あんなふうにカッコよく馬に乗りたいなあと思って、子どもなりにジョッキーになる方法とか調べたと思うんですけど、視力が悪いのでジョッキーにはなれないことが分かりました。それでも、馬に乗りたいな〜とは思ってましたね。
で、その後、小学校を卒業してから中学校の入学式までに、親の仕事の都合で大阪から奈良に引っ越したんですよ。
これが不登校の要因として、いちばん大きいと思います。
友だちがたくさんいた環境から、知らない子ばっかりの世界に放り込まれる、となったとき、「そんなもん、楽しくもないのに行く意味あんの?」って思いました。
その時点で、入学前からすでに行く気がなくなっていたと思います。
奈良の中学の子たちは地元だから、顔見知り同士じゃないですか。
そういう中に外からひとりで入っていったところ、クラスの奴が「あいつ誰?」「あいつなんなん?」とか、チラッと言うのを聞いたんですよ。
それで完全に「もうダメだ」と折れてしまいましたね。
今思うと、その「あいつなんなん?」と言った子も、悪意があったわけじゃなかったのかな、とも思います。知らない奴がいたから「誰?」と思っただけだったのかも。
でも、そこがHSPというか、過剰に感じ取りすぎて、メンタルをやられちゃったんですよね。
それで、入学して速攻で学校に行かなくなりました。「なんか今日しんどいし、行かんわ」とか言いだして。一週間も行ってないですね。3日くらいしか行ってないんじゃないかな。
G1さんのお話を聞いて、申しわけないのですが、私はちょびっとだけ笑いそうになってしまいました。「え、それだけ?」とキョトンとしてしまって……。
「あいつ誰?」と言われたと聞いたときには、その後にいじめでもあったのかなと思ったら、そういった明白な記憶があるというわけでもないそうです。そして3日しか行かないというのは、諦めが早すぎる気もします。クラスの子も、いじめる暇もなかったんじゃないかなあと推察します。
気にしすぎと言えばそうですが、そこはやはり「知らない人ばかり」という極度の緊張状態に、人の気持ちを感じやす過ぎるHSPの性質が重なって、ちょっとした意地悪さが大きく増幅されて感じられたのかもしれません。
しかしふと思い返すと、そういえば私も、中学の入学時に学区が変わってしまったという理由で知り合いのいない中学校に通うことになりました。G1さんと同じような状況だったわけです。
私は小学校時代、G1さんのように活発なタイプではなく、オドオドしたところもあるタイプでしたから、すると、私のほうが友だちが作れず不登校になりそうにも思えますが、学校に行くのをしんどいとは感じても、G1さんのように「楽しくないなら行かなくてよくない?」なんてことは、発想自体が浮かびませんでした。
「学校とは行かなきゃいけないもの」と思っていたので、つらくても行くという選択肢しか知りませんでした。
そう考えると、中学生時代のG1さんは、まるで後につづく「馬一本」の人生に早い年齢から突進していくために、なるべくして学校からドロップアウトする道を選んだかのようにも思えてくるのです。
ちゃんと自分の直感的なアンテナに従って、「嫌なものは嫌」とはねつけられる感性があったんだなあと。
入学して数日で「行く意味ない」と思うことができて、かつ、実際に行かない選択をできることって、自分の心をクリアに感じられてないと、できない気がします。
不登校になる子って、こういった「自分の気持ちをキャッチするアンテナ」みたいなものが鋭いんじゃないかな、と思うことが度々あります。
そのあたりも掘り下げて聞きたいなと思いつつ、まずは不登校になってからハーモニィカレッジに行くまでの流れについてうかがいます。
なんか、競馬の細かいマニアックなデータや情報をめちゃめちゃ記憶してたんですよね。
だから、HSP以外にも、ちょっと発達障害っぽいところもあるんじゃないかなあという気もしてるんですよね。きちんと調べたことがあるわけじゃないんですけど。
発達障害やアスペルガーの人って、記憶力が異常によかったり、なにかに強くこだわったりとか、特殊な性質や才能もあったりするじゃないですか。
自分もそういう感じだったのかなあと、ちょっと思ったりしますね。
そんなこんなで数ヶ月ほど引きこもってたかなあ。ある日、親が本かなにかに載っていたハーモニィカレッジの記事を見せてきて、「そんなに馬が好きでゲームばっかりしてるくらいやったら、本物の馬に乗りに行ってみるか?」と言ってくれたんです。
それで一日乗馬体験をしに鳥取まで遊びに行ったんですね。
そこで生まれてはじめて、本物の馬に乗りました。
で、一回本物の馬に乗っちゃったら、そりゃもう「もっと乗りたい!」ってなりますよね。
それで、学校に行ってないなら「寄宿生」というのもあるよ、と聞いて、僕としてはとにかく「馬に乗りたい!」となってるから、「ここに行く!」と自分から親にめっちゃ言ってたと思いますね。
発達障害とは、自閉症やアスペルガー症候群、学習障害などの総称ですが、そういった障害といわれる症状を抱える方には、特殊な発想ができたり、特技あったりと、際立った才能を発揮してクリエイターや専門家として活躍する人もいるようです。
有名なところでは、スティーブン・スピルバーグ監督は学習障害やアスペルガー症候群という診断を受けているとか。
私はこの発達障害の方の書いた本などを読むのがとても好きです。発達障害の人って、普通では思いつけないような突飛な発想ができたり、好きなことにまっしぐらに突進できるところがあったりして、魅力的に感じるのです。
自分自身も発達障害的な傾向があるんじゃないかなあと感じています。アーティストには多いと思いますね。
障害という規定をするよりも、個性と捉えたほうがふさわしいんじゃないかなあという気が、個人的にはしています。
自閉症の東田直樹さんの『自閉症の僕が飛びはねる理由』という本など、人間の奥深くにある野生的ななにかを目覚めさせてくれるものがあり、すこぶる面白いです。