勉強は大嫌い、だけど研究心はひと一倍
ところでG1さんのおっしゃる「HSP」とは、「ハイリー・センシティブ・パーソン」の略称で、生まれつき「非常に感受性が強く敏感な気質をもった人」という意味だそうです。
場や人の空気を敏感に読みとる能力に長けているかわりに、人の気持ちを必要以上に考え過ぎてしまったり、共感し過ぎてしまうようです。
また、物音や光や食べ物などの五感で感じる環境の変化にも強い影響を受けやすいとのこと。いわゆる「KY=空気を読まない」の逆で、空気を読みすぎてしまうタイプといえるでしょうか。
G1さんが「怒鳴り声を聞くと辛くなってしまう」というのも、言っている内容そのものよりも、怒りのエネルギーを体や心が吸収し過ぎてしまってくたびれるのかもしれません。悲惨なニュースなどを見たときに、まるで自分のことのように辛くなってひどく落ち込んでしまうのと近いでしょうか。
日本は国民性から、HSPの割合が他の国よりも比較的高いとも言われているそうです。そして、こういった体質の子が不登校になるケースというのも、よく耳にするようになってきた気がします。
感受性が敏感というのは悪いことばかりではなくて、アーティスティックな才能を持った人にも多いタイプではないかと思います。感覚が鋭くて直感が冴えているタイプでもあると思うのですよね。強みにもなる個性だと思います。
かく言う絵描きである私も、HSPの傾向が割とあるような気がしますから。
物語を書く作家さんにも多いと思います。人の心理の奥の奥まで読み取ってしまう鋭さは、小説家として必要な資質のひとつでしょうし。
こういった、一見弱点のようでいて、強みでもある個性をもつ人たちが、のびのびと思春期を過ごせる環境が日本にもたくさん増えたらいいのになと思います。
さて、HSPらしき体質が原因で学校に行かなくなったというG1さんですが、中学生時代は勉強が大嫌いでまったく勉強はしなかったそうです。
けれどG1さんとお話していると、「とてもスマートに論理的な語り口で話す方だなあ」という印象を受けます。
「いかにも賢そうな感じ」と言っちゃうと語弊があるかもしれませんが、「論理家だな」という印象なのです。
「勉強大嫌いだったとのことですが、すごく論理的に話をされるなあという印象なんですが……」
そうたずねてみると、「勉強嫌いの研究熱心」ともいうべきG1さんの姿が見えてきました。
次回は、中学校に行かなくなった過程と、「学校の勉強」はまったくしなくても、自分の好きなことを追究することにかけて際立った学習センスを持った少年が、どんなふうに「学校に行かない生活」をすごしていたのかをうかがっていきたいと思います。