理論社

第7回

2020.08.01更新

自分の道を見つけたい! 第7回 ここいろ篇1

同性愛者? 異性愛者? 見た目や戸籍は男? 女?

まずは、お二人のセクシャリティについてご紹介したいと思います。

あっきーこと、當山敦己さんは、女性として生まれたけれど、性自認は男性で、数年前に性別適合手術をして、現在は戸籍上の性別を男性に変更されています。當山さんの場合は恋愛対象が女性なので、「自分はレズビアンなのかな?」と悩んだ時期もあったそうですが、性自認が男性なので、異性愛者ということになります。

さーちゃんこと、高畑桜さんは、性の自認は中性的で「男性!って訳じゃないけど、女性っぽくもない」という感じだそう。最近では「Xジェンダー」という言葉が出てきているので、それかなあと思っているそう。そして女性が好きなので、「レズビアン」という言葉を使ってはいるものの、厳密にいうと性自認が女性とは言い切れない気持ちがあるので「レズビアン(同性愛者)」という言葉にしっくり来ない感覚があるとか。言えるのであれば「女性愛者」という言葉を使いたい、とのこと。

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ほほう! と目が開かれる思いがしまいます。 お二人についてうかがうだけでも、「性=セクシャリティ」というものがどれほどバラエティ豊かなものかということがよく分かります。

お二人が開催するセクマイバーで、私が特に良いなと思ったのが、最初に参加者全員で、ずいぶん明けっぴろげな自己紹介をしちゃうことでした。 この自己紹介、セクマイバーだけあって工夫が一味ちがいます。 以下のイラストと写真を見てください。

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こんなふうにボードとマグネットを使って、自分のセクシャリティについて「しょっぱなから詳細にカミングアウト」してしまうのです。もちろん、言いたくない人は言わなくてもよいのです。そういう空気感もしっかり作られていました。

こういった自己紹介は、「セクシャリティについて真面目に語り合おう」という場だからこそできることですね。自分の性について悩みを抱える方は、一般的には、友人や家族などの他者にカミングアウトをすることにものすごく勇気を必要としますから。 その大変なことを、いちばん最初にやっちゃって、丸裸にしてしまおうというのだから、最初は「え! そんな自己紹介するの??」とたじろぎました。 ところが、この「最初に核心的なことをぶっちゃける」という方法が功を奏しているようで、初対面の方にいきなり深い話をしても大丈夫、という空気がしっかり作られる土台となっているように感じました。

この自己紹介ボードの特徴は、「女」「男」の自認の割合を0〜100の数値の中で選べるので、「自分の女度は70%くらいかな」と曖昧な捉え方ができるところだと思います。
例えば私は、こんなふうに自己紹介しました。

「生まれた性は女性です」

「表現している性は、着てる服も女物だし、女かなあ。私は短歌をつくる歌人でもあるんですけど、短歌では女性として生きる辛さや怒りをすごく爆発させて表現していましたね」

「性自認については、なんか昔から心の中にずっと、『武将のおじさん』と『説教くさい坊主のおじさん』と『少年剣士』のキャラがいる感じでした。そのせいか、女の子っぽくキャピキャピするのが苦手だったし、年頃になると、女として色気をふりまくことも一応やるんだけど、な〜んか違和感があったんですよね。で、あるとき、自分の本性は、実は半分以上おじさんなんじゃないか!? と思ったときに、ふわ〜っと謎がほどけたような気がして楽になったんです。小さい頃から、妙に老けたメンタルだったのも、自分の中におじさんが住んでたからか……と。だから『女らしくふるまう』ってことに、どことなくしんどさを感じてきたのかなあと」

「性指向としては、異性のパートナーがいるんだけど、そういえば彼に対してどことなく『お母さんみたい』と感じることがあって、私ってなんか、あなたの息子みたいだよね、と言ったりしています。昔から男性の肉体美よりも女性の裸の曲線美や色っぽい姿のほうに目がいきがちで、性的な目で見ていたことも多かった気がするんですよねえ」

こんな具合に自分の性認識について露骨に語ったのは初めての経験でしたが、他者に向けて自分について語ることで、これまで漠然としていた自分自身の性について、一本の筋が通った気がしました。とはいえ、その筋は硬固なものではなく、ゆらゆらと揺れていて、定まったものではないという感じです。その揺れ自体が、自分という人間の内面の多様さを表すかのようでもあります。
そして、自分について他者にカミングアウトする体験を持つことで、「他者の多様さも受け入れよう」という心構えが備わったようにも感じました。

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